マグマ・マントルのダイナミクス

ホットスポットの火山活動は非定常的


    地球表層の地殻と深部のマントルとの間では熱や物質の循環が起きており、これにより地球が進化していると考えられています。この原動力として最も重要なのはマグマ活動です。マグマ活動によってマントルを構成する物質が溶融し、表層へ運搬され地殻を形成します。地殻の一部はプレート運動に伴ってマントルに輸送されます。このような物質の循環を地殻-マントルリサイクリングと呼んでいます。地球上には様々なマグマ活動の場があり、ホットスポットはその代表の一つです。ホットスポットとは、プルームと呼ばれるマントル内の上昇流が溶融する場と考えられています。いくつかのホットスポットは継続的に活動しており、その期間は数百~数千万年に及びます。このような長寿命のホットスポットはマントル内部で起きていた大規模な熱や物質の循環機構を解明する手がかりを与えてくれる可能性があります。 本研究では代表的なホットスポットの一つであるアイスランドの第三紀火山岩の主成分、微量成分元素組成およびSr-Nd-Hf-Pb同位体組成を分析しマグマ組成の時間変動を明らかにしました。同位体組成の変動から、異なる3つのマントル物質がマグマの生成に寄与したこと、またそのうちの2つは地殻物質を起源としていることがわかりました。また、それぞれの起源物質がマグマ活動に関与する程度が時間とともに変化していることも明らかになりました。この結果から,マントルプルームの上昇による物質の移送が定常的ではなくパルス状に起きていることがわかりました。

    Kitagawa, H., Katsura, K., Makishima, A., Nakamura, E., Multiple Pulses of the Mantle Plume: Evidence from Tertiary Icelandic Lavas., J. Petrol., 49, 1365-1396, 2008., doi:10.1093/petrology/egn029.

    (左図)地殻物質(E-1, E-2)のマグマ活動への寄与程度(αE-1, αE-2)(a, b)と溶岩の噴出量(c)、Irminger海盆のフリーエア重力異常(地殻の厚さ,すなわちマグマの生成量に対応)(d)の時間変化。 αE-1,αE-2がαDに対して増大すると、マグマの活動が活発になることがわかります(溶岩噴出量,マグマ生成量)。

    (右図)アイスランドマントルプルームの発達史(左図と比べてください):(a)1300万年前,マントルプルームの上昇がE-1タイプ主体の地殻起源物質をマントルの浅所に運搬しました。これによりマグマ活動が盛んになりました。(b)1000万年前になると,E-1は溶融し尽くされ、かわりにDというかんらん岩主体の物質がマグマ生成に関与してきます。Dは溶融温度が高く、相対的に解けにくいのでマグマの生産量が減少します。(c)700-800万年前になると、E-2という別のタイプの地殻起源物質を主体とした塊がマントルプルームに取り込まれ上昇してきました。これによりマグマ活動が再び活発化しました。(d)6500万年以降は地殻物質の顕著な輸送が行われなかったため、マグマ活動が減衰していきました。

     

ハワイプルームの化学的構造


 ハワイ火山が形成する2列の火山列(ケア・ロア系列)は、下部マントル由来のマントルプルームの化学的構造を理解する上で最も重要な情報を与えてきました。本研究では、ロア系列火山岩の主成分元素、ストロンチウム・ネオジム・ハフニウム・鉛同位体組成の系統的な変化および火山噴出量をもとに、ハワイプルームの熱的・構造的中心はケア系列側に近く、プルーム活動の活発化に伴いリサイクルした苦鉄質物質がマントル最下部付近でプルーム内に取り込まれた事によって、プルームの中心から離れた部分に一時的にロア系列火山が形成された、というモデルを構築しています。本モデルは、従来のモデルでは説明できなかったロア系列火山岩の系統的変化、300万年前以前のハワイ天皇海山列におけるロア系列火山岩の欠乏、コーラウ火山の化学的進化過程、を明解に説明することができます。

    Tanaka, R., Makishima, A., Nakamura, E., Hawaiian double volcanic chain triggered by an episodic involvement of recycled material: Constraints from temporal Sr-Nd-Hf-Pb isotopic trend of the Loa-type volcanoes. Earth Planet. Sci. Lett. 265, 450 – 465, 2008.