高精度地球化学システマティクスから見たマントルの物質進化

非常に低い鉛同位体比を持つ、北海道・幌満かんらん岩体の岩石


    上部マントルの部分溶融により、中央海嶺玄武岩が生じ、とけ残った上部マントルはインコンパティブルな微量元素に枯渇している。我々は、上部マントル溶融のとけ残り部分と考えられる北海道の幌満かんらん岩体の岩石試料の主成分元素組成、微量元素組成、鉛・ネオジム・ハフニウム同位体比を測定し、上部マントルにはこれまで知られていなかった非常に低い鉛同位体比を持つ岩石があることを発見した。岩体は10億年前の部分溶融に起源を持ち、その後のマントル対流でも生き延びたと考えられる。上部マントルにはこのように非常に枯渇した部分がかなり大量(30%程度?)に「ひっそりと」存在し、地球の上部マントル組成はこれまでに考えられていた以上に枯渇しているようである。これは、一般的な上部マントル組成を用いた全ての地震学・岩石学上のモデルを考え直す必要があることを意味する。

    Malaviarachchi, S.P.K., Makishima, A., Tanimoto, M., Kuritani, T., Nakamura, E., Highly unradiogenic lead isotope ratios from the Horoman peridotite in Japan, Nature Geosciense., 1, 859-863, 2008. Abstract (Nature Online)

    図:(a)206Pb/204Pb-207Pb/204Pbプロット, (b) 206Pb/204Pb-208Pb/204Pbプロット, (c, d)他地域のかんらん岩体・捕獲岩試料の鉛同位体比との比較, (e) 206Pb/204Pb-143Nd/144Ndプロット, (f) 206Pb/204Pb-176Hf/177Hfプロット